正社員妻、パート妻、専業主婦の幸福度
パートタイマーの平均時給は889円。
1日5時間・週5日勤務ならば年収は100万円強になる。
そのパート勤務とフルタイムの正社員、さらに専業主婦と、既婚女性の身の振り方がいくつかある中、最も「割得」な選択肢は一体どれか。
まずはパート妻の収支の検証から。
ここで「最も割損な年収ゾーンは100万~150万の間」と言い切るのはファイナンシャルプランナーの伊藤誠氏だ。
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パート妻の割り損な年収ゾーン ※夫の合計所得金額が1000万円以下の場合
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■100万円以下
夫の扶養家族としての扱いが全て受けられる。
■100万円超
妻に所得税がかかる
■103万円超
夫の配偶者控除が一部外れる。
夫の会社の配偶者手当がなくなる場合も
■130万円超
妻自身が健康保険や年金に加入し、保険料を払う必要が生じる。
■141万円超
夫が受けていた税金の配偶者控除がなくなる。
その他、夫の扶養家族としての扱いが全てなくなる。
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年収が100万円を超えると段階的に税金の控除が縮小され、保険料支出が増えてしまう。結果、収入が増えても手取り金額は減るという逆転現象が起こることになる。
さらに妻自身の外食費など支出も同時に増えるので、年収増が実感できるのは、年収200万円以上が目安。
しかしそれをパートで稼ぎ出すのは難しいだろう。
したがって割得な働き方は、税金や保険料の支払い義務が一切ない年収100万円以下のパート勤務か、安定収入があって社会保障も手厚い正社員に二極化する。
また一方で、夫が会社員なら、月々の保険料の自己負担ゼロで健康保険に加入でき、将来年金も受け取れる専業主婦も割得な選択肢である。
しかし伊藤氏は注意を喚起する。
「ポイントは老後の生活資金です。そこそこの年収のある会社員なら、受け取る年金は厚生年金の上乗せ分も含め1人200万円ほど。夫婦とも正社員なら年金の合計は400万円で、それだけで生活できます。
しかし、妻がパートや専業主婦の場合、年金額は80万円弱で世帯収入は280万円。この年間120万円の年金の差は大きいですよ」
正社員妻なら夫婦で受け取れる年金は年間120万円多い。
このように視点を年収から生涯収入に置き換えれば、損得勘定における正社員主婦の優位性は明らかだが、既婚女性の再就職はたやすいことではない。
正社員として働いていた女性が育児のために1年以上職を離れた場合、再び正社員として仕事に就けるケースは1割以下。
残りの9割以上はパートタイマーである。
したがって一部の女性が、決して安くない保育費を払いつつも、正社員として働き続けることを選ぶのは、生涯収入という観点から見れば、理にかなっている。
そしてその肉体的にも精神的にも大きな負担を強いる「正社員妻」という生き方は、妻個人の意志だけで実現できるものではなく、家族、とりわけ夫の理解と協力なくしては実現しえないものだ。
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妻の働き方別に見た妻の夫婦関係満足度
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無職/専業主婦 不満13% - 普通35.4% - 満足51.6%
長期パート 不満30.7% - 普通40.7% - 満足28.6%
短期パート 不満16.7% - 普通38% - 満足45.3%
常勤/社員 不満16.3% - 普通33.7% - 満足50%
自営ほか 不満14.9% - 普通47.5% - 満足37.6%
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調査結果で、正社員妻と専業主婦の満足度が高いのに比べ、長期パート妻の満足度が際立って低いのは、理想とする収入や働き方、家庭内での役割が夫婦間で共有できておらず、その結果、しわ寄せが妻へと向かってしまったことの現われではないか。
豊かさの指標は収入だけではない。
家族の満足を真剣に追求すれば、各家庭にふさわしい妻の働き方はおのずと導き出されるはずだ。【石田順子=文】